四国カルスト…初秋霧流 2005年9月18日

7月7日以来の四国カルスト探訪に軽い興奮を覚えながら,仲秋の名月に照らされた山の中の道をひた走る。先ほどまで,野ウサギを見て「わぁ,かわいい!」,月を見ては何度も「わぁ,きれい!」と感激していた家内がいつの間にか夢のかなたにいっている。運転手に気を遣うことなく堂々と寝られるこの神経を常日ごろ羨ましいと思っている。繊細な私には到底考えられない。(-_-;)

車が高度をあげるにつれて月の光が弱くなる。ほどなく,ライトに照らし出される薄い霧。夜の山霧の中を走るのは久しぶりのような気がする。そう思ったのもつかの間,急に霧が濃くなる。10m先が見えない。道路の端に引かれた白線を目印にハンドルを操作する。数キロも徐行運転が続く。ところどころ霧が薄くなってホッとしたと思ったら直ぐにまた深くなる。緊張の連続だ。軽く感じていた眠気もいつの間にか吹き飛んだ。

家内が目を覚ます。夢の中からもどってきたら今度は霧の中だ。私は石鎚山系で何度も経験しているが,家内は夜霧の中を走るという経験はほとんどない。深い霧にびっくりしている。

霧の中をやっと抜けたのは姫鶴平を過ぎてからだ。明るくなった。月の位置はかなり低くなったがまだしばらくは道を照らしてくれそうだ。見晴らしのよさそうなところで車を止め車外に出てみる。走ってきた方には大きな雲海のうねりが見える。すごい雲海が見えると家内を車外に促す。あの雲海の中を走ってきたわけだ。

今回の四国カルスト探訪の主目的は日の出時の雲海だった。頭の中に描いている光景が現実のものとなる可能性を確認するために天狗荘の駐車場まで行く。月の光に照らし出されているのは紛れもなく雲海だ。「こちらにも雲海がある。よし,これなら期待できる!」

山野草を撮るのに忙しく最近は「山の写真」を撮る機会がない。そこで今回は,山の風景を撮影するために中判の銀塩カメラとそれに相応しい三脚を持ってきた。本格的に銀塩カメラを操るのは1年ぶりだ。

人の気配がする。だれかが駐車場の端で三脚を立てている。おお,月の光で雲海を写すつもりか。後で分かったことだが,この人は香川からやってきた風景写真家だった。定年を迎えたからなのか,脱サラをしてなのかは分からないが,「人生は一度だけだから」と意を決して風景写真で生計を立てているような話だった。そういえば,私も子育ての責任が終わったら「1年中アルプスを徘徊して山岳写真を撮りたい」などとかなりまじめに夢想していた時期があったなぁ…。ところが今や,膝・足首・手首と故障を抱えて満身創痍だ。その上に増加した体重を持て余している。(^_^;)

さて,月夜の雲海に私も写欲がないわけではないが,この場所からは雲海と組み合わせるシルエットとなるポイントがないのでカメラは出さない。頭の中に描いている撮影ポイントの近くまで車道を戻り駐車スペースに車を止める。午前4時だ。せっかくだから仲秋の名月をデジカメで撮影する。ススキをシルエットで入れたいと思って肝心のススキを探している間に月は非情にも押し寄せてきた濃い霧に隠れてしまった。

日の出は6時少し前のはずだ。5時から撮影準備に入るとしてそれまで1時間は仮眠がとれる。背もたれを倒し寝る体勢をとる。しかし,…,やっと寝られるはずが,大規模な雲海を見たものだからその期待に脳が少し興奮しているようだ。それにしても,助手席からはもう寝息が聞こえる。これが家内の特技だ。どこででもどんな体勢でも寝られるのだ。これはアウトドア派向きの性格だが,家内の性格の中でこの点だけは羨ましい。

しばしまどろむも時間が気になり熟睡はできない。5時を過ぎたところで家内を起こし出かける準備をする。駐車場でお目にかかった香川の写真家も朝日狙いでやってきた。天狗荘に泊まっているらしい。2,3言葉を交わしてすぐに霧の高原に消えていった。朝露に濡れるのでスパッツも着ける。銀塩カメラとデジタルカメラの両方をカメラザックに入れて担ぐ。久しぶりに肩にずっしりと負荷がかかる。普段のデジタル機材がいかに軽いかがよく分かる。

予定していた撮影ポイントに行く。どうもおかしい。日の出時に逆光に輝くススキを前景に雲海と山のシルエットを入れた構図を描いていたが,肝心のススキが無い。正確に言うと,無いわけではないが,目立たない。この辺りはススキの数が少ないのか。まだ時間はあるのでススキの多そうなところに移動する。しかし,どうも雰囲気が異なる。ススキに近づいてよく見てみると,もう花穂は綿毛も無くなってしまっている。終わっているのだ。ううん,ススキは下旬まで楽しめるということだったが…。台風の影響で早く終わったのだろうか。

悪いことは続くものだ。肝心の雲海が文字通り「霧散」状態でしかもそれが辺りを覆っている。6時近くになるも太陽は見えない。すっかり霧に包まれた。やっと太陽が見えたときは6時を過ぎていた。その前後で何枚かデジタルカメラでレポート用の写真を撮る。結局,ドラマは何も起こらなかった。逆光に輝くススキと雲海は幻に終わった。(;_:)

この明るさと深い霧では花の撮影もできない。車まで撤退する。もう少し明るくなるまで仮眠をとろう。8時になっても深い霧の中だ。どうしたものか…。まさしく五里霧中だな。(^_^;)

光は乏しいがせっかくここまでやってきてこれ以上待つのも時間がもったいないので,散策に出ることにする。今回は,花の方は天狗高原を主に考えている。時間に余裕があれば天狗の森にも行ってみよう。ザックにデジタルカメラ機材だけを入れる。軽い!

(1)仲秋の名月

 

 

  

(2)山霧

西側も霧が流れている。薄くなったり濃くなったりしている。

 

(3)天狗の森

すこし視界が開けたときに記念撮影。

この右に太陽が出てきて,モルゲンロートを見せてくれるはずだった。(^_^;)

 

(4)霧中の展望台

ここに香川の写真家が陣取っている。風景写真家は待つのが仕事みたいなもの。

 

(5)太陽とススキ

綿毛が散って愛想の無いススキになっている。

 

 

(6)ススキらしいススキ

車に戻ってくる途中でススキらしいススキを見つけた。一部ではあるがまだ残っているようだ。

 

(7)霧中のハンカイソウ

と言っても,もう花期はとっくに終わっている。花後の茶色になったハンカイソウが無数に霧の中で揺れているのだ。

 

ここからが天狗高原の花たち。8時30分を過ぎているのに暗いな,と思いながら歩いているとほどなく少し霧が薄くなって明るくなってきた。これなら何とかシャッターを切れる光量を確保できそうだ。そして,20分もたつと薄日が射してきた。時折高原を光の帯が走った。風と雲と太陽のなせる業だ。

 

(8)朝露シリーズ その1

ツクシアザミ?

旬を過ぎるとこのような姿になるようだ。

朝露の雫が情緒がある。

 

(9)朝露シリーズ その2

たぶんイナカギクだろう。菊の類は難しい。「キク科は聞くな」と言うほどだ。(^_^;)

 

 

(10)朝露シリーズ その3

キンミズヒキ

 

(11)朝露シリーズ その4

ツリガネニンジン

 

(12)朝露シリーズ その5

テンニンソウ

写真が小さくなると朝露が見えない。(;_:)

 

(13)朝露シリーズ その6

ゲンノショウコ

 

(14)朝露シリーズ その7

正体不明

 

(15)朝露シリーズ その8

ヒメヒゴタイ

 

(16)朝露シリーズ その8

タデ科の何かだろう。ハナタデのような気がするがどうだろう?

 

(17)ススキと天狗の森

雲海を形成していた霧が上昇気流によってだろうか,山の上の方に集まって雲となっている。

下界はともかくも山の上はすっきりとした晴れにはなりそうにない。

 

(18)タカネオトギリ?

この程度の標高のところにタカネオトギリが咲いているものだろうか?

 

(19)ツリガネニンジン

歩いているうちにツリガネニンジンが群生をつくっているところを偶然に見つけた。黄色い花はキンミズヒキ。

 

(20)アキノキリンソウ

キンミズヒキとともにアキノキリンソウもあちこちにある。

撮影紀行のトップページに戻る